建設業の記帳は、領収書や請求書を帳簿に入力して、決算書を作るためだけの作業ではありません。
建設業では、工事ごとの支出や完成・未完成の状況、材料費や外注費などの取引内容を確認しながら、会計資料を整理していくことが大切です。
また、建設業許可を受けている会社では、事業年度終了後の決算変更届があり、公共工事を発注者から直接請け負うことを予定している場合には、経営事項審査、いわゆる「経審」との関係も出てきます。
そのため、決算の時期になってから一年分の資料をまとめて確認するのではなく、日々の記帳や会計資料の整理の段階から、必要な情報を確認できる状態にしておくことが重要です。
弊所では、会計事務所での実務経験を活かし、建設業の記帳・会計資料の整理と、建設業許可、決算変更届、経営事項審査などの建設業関係手続とのつながりを意識しながら、資料整理をサポートしています。
税務申告や税務相談などの税理士業務については、税理士様との役割分担を大切にしています。
最初からすべての資料を完璧に整える必要はありません。
まず現在の状況を確認する。
次に、必要な資料や手続を整理する。
そして、できるところから順番に整えていく。
このように、後からの手戻りをできるだけ抑えながら進めていくことを、弊所では大切にしています。
建設業の記帳で大切なのは「工事」と「数字」をつなげること
一般的な経理では、売上や経費などの取引を会計帳簿に記録し、会社のお金の流れや経営状況を把握していきます。
建設業では、それに加えて、取引と工事との関係を確認することが重要になります。
たとえば、次のようなことです。
- この支出は、どの工事に関係するものなのか
- 工事は完成しているのか、施工中なのか
- 材料費、外注費、労務費など、どのような取引なのか
- 建設工事以外の事業に関する取引ではないか
- 決算時に確認が必要となる工事や資料はないか
建設業法に基づく財務諸表では、「完成工事高」「完成工事原価」「未成工事支出金」など、建設業に特有の勘定科目が用いられます。
国土交通省の勘定科目の分類では、例えば「未成工事支出金」は、引渡しを完了していない工事に要した工事費や、材料購入・外注のための前渡金、手付金などを整理する科目とされています。
また、「完成工事高」は完成工事などに対応する収益、「完成工事原価」は完成工事高に対応する工事原価として整理されています。
そのため、建設業の会計資料では、単に金額を記録するだけでなく、
「この数字は、どの工事と関係しているのか」
という視点を持って資料を整理しておくことが大切です。
建設業の記帳で確認しておきたいこと
| 確認すること | 主な目的 |
| 工事ごとの支出 | 工事に関係する支出を確認しやすくする |
| 工事の完成・未完成 | 決算時の確認につなげる |
| 材料費・外注費・労務費等 | 支出内容を確認しやすくする |
| 建設業以外の取引 | 兼業事業との区分を確認する |
| 請求書・領収書等 | 後から取引内容を確認できるようにする |
| 工事関係資料 | 建設業関係手続に必要な情報を確認しやすくする |
「決算のときにまとめて整理する」のではなく、日々の記録を積み重ねておく。
これが、建設業の会計資料を整理するうえでの基本になります。
建設業の会計資料は3つの視点から整理する
建設業の会計資料を確認するとき、弊所では大きく3つの視点を意識しています。
会社全体の数字
まずは、会社全体のお金の流れや財務状況です。
たとえば、
- 売上
- 利益
- 売掛金・未収入金
- 借入金
- 自己資本
- 現預金
などについて確認します。
会社全体の数字を把握することで、現在の会社の財務状況を確認しやすくなります。
工事ごとの数字
次に、工事ごとの状況を確認します。
- どの工事にいくら支出しているか
- 材料費や外注費などはいくらか
- 完成した工事なのか、施工中なのか
- 決算日をまたぐ工事があるか
などです。
工事ごとの資料が整理されていれば、決算時に確認が必要となる事項も整理しやすくなります。
建設業関係の手続につながる情報
建設業許可を受けている会社では、毎事業年度終了後に決算変更届が関係します。
また、公共工事を発注者から直接請け負うことを予定している場合には、経営事項審査との関係も出てきます。
そのため、
会社全体の数字
↓
工事ごとの数字
↓
建設業関係の手続
という流れが途切れないように、必要な資料を整理しておくことが大切です。
これは、経審のために会計上の数字を作り変えるという意味ではありません。
会社の実際の取引や経営状況を会計資料に反映し、その資料を必要な建設業関係手続につなげられる状態にしておく。
弊所では、そのための資料整理をサポートしています。
月々の記帳で確認しておきたいポイント
月々の記帳には、過去の取引を整理するだけでなく、現在の会社の状況を確認するという役割もあります。
工事ごとの支出を確認する
材料費、外注費、労務費などについて、可能な範囲で工事との対応関係を確認します。
工事ごとの資料が整理されていれば、完成した工事と施工中の工事を確認するときにも役立ちます。
施工中の工事を把握する
決算時になって初めて確認するのではなく、
- 現在施工中の工事
- 完成した工事
- 決算日をまたぐ工事
などについて、日頃から確認できる状態にしておくことが大切です。
特に、決算日現在で施工中の工事がある場合には、工事の状況や支出の状況などについて確認が必要となる場合があります。
証憑と会計資料を対応させる
請求書、領収書、注文書、外注関係資料など、取引内容を確認できる資料も整理します。
「帳簿上の数字は分かるけれど、後から何の取引だったのか分からない」
という状態を避けることは、継続的な会計管理において重要です。
決算後の手続を意識する
建設業許可を受けている場合、決算変更届は毎事業年度終了後4か月以内に提出することとされています。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、財務諸表などの資料が関係します。
そのため、月々の記帳を、
「一年分の数字を最後にまとめる作業」
と考えるのではなく、
「毎月の取引や資料を整理し、決算時の確認につなげていく作業」
と考えることが大切です。
決算変更届につながる資料を日頃から整理する
建設業の決算では、税務申告だけでなく、建設業許可を受けている会社については建設業法上の手続も関係します。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、貸借対照表、損益計算書などの書類が関係します。
そのため、
- 工事名や工事内容を確認できる資料
- 請負金額を確認できる資料
- 工事ごとの支出資料
- 完成・未完成を確認できる資料
- 請求書や領収書
- 外注関係資料
- 会計資料
などを、後から確認できる状態にしておくことが重要です。
もちろん、必要となる資料や確認方法は、会社の状況や申請先などによって異なります。
「決算になってから探す」のではなく、「必要になったときに確認できる状態にしておく」。
この考え方が、建設業の会計資料整理では大切です。
経審を見据えて、現在の経営状況を把握する
経営事項審査、いわゆる「経審」は、公共性のある施設や工作物に関する一定の建設工事を、発注者から直接請け負おうとする建設業者に関係する制度です。
経審では、経営状況、経営規模、技術的能力、その他の社会性など、一定の客観的事項について審査が行われます。
経審の制度や評価項目は改正されることがあります。
2026年7月1日にも経営事項審査の制度改正が施行されており、国土交通省は改正後の手引きや確認資料等を案内しています。
そのため、経審について具体的な手続を行う場合には、その時点での制度、申請先の手引き、確認資料などを確認することが重要です。
この記事では、経審の細かな評価項目を一つひとつ解説することは目的としていません。
弊所が大切にしているのは、
「経審のために記帳方法を変える」
という考え方ではなく、
「会社の実際の取引や経営状況を適切に整理し、必要な資料につなげられる状態にしておく」
という考え方です。
たとえば、
- 借入金の状況
- 利益の状況
- 自己資本の状況
- 工事原価
- 完成工事高
- その他の財務状況
などを確認できる状態にしておくことで、現在の会社の状況を把握しやすくなります。
経審の具体的な制度や申請については、別ページで詳しく解説しています。
→ 経営事項審査(経審)の詳しい解説はこちら
建設業許可についても、現在の財務状況を確認しておく
建設業許可では、一般建設業と特定建設業で、財産的基礎等に関する要件が異なります。
そのため、建設業許可を受けている会社では、自社の財務状況について日頃から確認しておくことが大切です。
ただし、建設業許可に関する財産的基礎等の要件は、特定の一つの数字だけを見て判断できるものではありません。
たとえば、
「自己資本が一定額を下回ったから、直ちに許可を維持できない」
というように単純化して判断することは適切ではありません。
許可の種類、申請や更新の内容、会社の状況などによって確認すべき事項が異なるため、具体的な判断が必要な場合には、建設業許可を扱う行政書士等の専門家に確認することが大切です。
一方で、会社の財務状況を日頃から把握しておくことは、許可に関する手続や今後の事業計画を考えるうえでも役立ちます。
決算直前になって初めて確認するのではなく、
「現在、会社の財務状況はどうなっているのか」
を早めに把握しておく。
弊所では、そのための会計資料整理も大切にしています。
→ 建設業許可の詳しい解説はこちら
税理士様との役割分担を大切にしています
弊所は行政書士事務所です。
税務代理、税務書類の作成、税務相談などの税理士業務を行うものではありません。
国税庁も、税務代理、税務書類の作成、税務相談を税理士業務として整理しています。
そのため、税務上の判断や申告、税務相談などが必要な場合には、税理士様へのご相談・連携をご案内します。
一方、弊所では、建設業許可、決算変更届、経営事項審査などの建設業関係手続を扱う行政書士として、工事関係資料や会計資料を確認し、必要な情報を整理します。
それぞれの役割
| 領域 | 主な担当 |
| 取引資料の整理・記帳に関する業務 | 弊所 |
| 建設業関係手続を見据えた資料整理 | 弊所 |
| 建設業許可 | 弊所 |
| 決算変更届 | 弊所 |
| 経営事項審査 | 弊所 |
| 税務申告 | 税理士様 |
| 税務相談 | 税理士様 |
| 税務上の判断 | 税理士様 |
大切なのは、
「どちらが全部を担当するか」
ではなく、
「それぞれの専門分野を分けながら、必要な情報をつなぐこと」
だと考えています。
税理士様が税務申告を行う際にも確認しやすいよう、取引資料や会計資料を整理する。
そして、建設業許可、決算変更届、経営事項審査などの手続では、その資料を必要な書類や情報につなげていく。
そのような役割分担を大切にしています。
記帳を「会社の現在地を確認する時間」に
記帳代行というと、
「領収書を渡せば、帳簿を作ってもらえる」
というイメージを持たれるかもしれません。
もちろん、日々の取引を整理することは基本です。
しかし、建設業では、それだけでなく、
「現在の会社の数字がどうなっているのか」
を確認することにも意味があります。
たとえば、
- 工事ごとの支出はどのようになっているか
- 施工中の工事はどの程度あるか
- 売掛金・未収入金はどのように推移しているか
- 借入金はどのように推移しているか
- 利益や自己資本の状況はどうなっているか
- 次の決算や建設業関係手続に向けて、確認しておく資料はないか
といった点です。
数字を確認したからといって、必ず何らかの対策を行わなければならないわけではありません。
まずは、現在の状況を知ること。
そのうえで、税務や経営判断などについて検討が必要な場合には、税理士様など適切な専門家とも相談しながら、今後の対応を考える。
弊所は、そのための「整理役」として関わることを大切にしています。
「何から始めればよいか分からない」段階からご相談いただけます
建設業の記帳や会計資料について、
「記帳をお願いしたいけれど、何を準備すればよいか分からない」
「税理士には依頼しているが、建設業の決算変更届や経審まで考えると少し不安」
「工事ごとの資料が整理できていない」
というご相談もあると思います。
そのような場合でも、最初からすべての資料を完璧に揃えていただく必要はありません。
まずは、
- 現在の会計処理・記帳の状況
- 工事関係資料の保管状況
- 建設業許可の状況
- 今後予定している手続
- 税理士様との現在の役割分担
などを確認します。
そのうえで、
現在の状況
↓
必要な資料
↓
必要な手続
↓
今後の段取り
という順番で整理し、現在の状況に応じてご案内します。
「何から始めればよいか分からない」という段階からでもご相談いただけます。
建設業の記帳・会計資料整理についてご相談ください
「今の会計資料の整理で大丈夫だろうか?」
「決算変更届や経審を考えると、どの資料を整理しておけばよいだろうか?」
「税理士様には依頼しているが、建設業関係の手続に必要な資料についても確認しておきたい」
そのような場合には、現在の資料や状況を確認しながら、必要な情報を一緒に整理します。
最初からすべてを完璧に整える必要はありません。
まずは現在の状況を確認し、必要なことから順番に整理していきましょう。
初回相談は1時間無料
毎週3名様限定で、個別相談をお受けしています。
「まだ正式に依頼するか決めていない」
「何から考えればよいのか分からない」
という段階からでもご相談いただけます。
この記事の位置づけ
この記事は、建設業許可や経営事項審査そのものを詳しく解説するページではありません。
建設業の「記帳」「工事」「会計資料」と、「建設業許可」「決算変更届」「経営事項審査」とのつながりを整理するための記事です。
建設業許可について詳しく知りたい方は、建設業許可の専門ページをご覧ください。
経営事項審査について詳しく知りたい方は、経営事項審査の専門ページをご覧ください。
それぞれの制度を個別のページで詳しく説明し、このブログ記事では、
「日々の資料整理を、建設業関係の手続につなげていく」
という部分を中心にご案内しています。
制度や必要書類は変更されることがあります。
特に経営事項審査については、2026年7月1日施行の制度改正も行われていますので、具体的な申請を行う際には、その時点での最新の制度、申請先の手引き、確認資料等をご確認ください。
建設業の会計資料について「何をどこまで整理すればよいのか分からない」という場合も、まずは現在の状況から一緒に整理していきます。

