経営事項審査(経審)では、「完成工事高」が重要な評価項目の一つになっています。
「完成工事高って売上高のこと?」
「経審では何年分を見るの?」
「複数の建設業許可を持っている場合、どう考える?」
「元請工事が多いと完成工事高も有利になる?」
このような疑問を持つ建設業者の方も少なくありません。
経審では、完成工事高を単純な会社全体の売上高として見るのではなく、建設業の許可業種ごとに整理して評価します。
この記事では、経審における完成工事高の基本的な考え方と、X1・Zとの関係を分かりやすく解説します。
細かな計算方法や個別の工事の振り分けまでは扱わず、まずは「完成工事高をどのように考えればよいのか」を理解することを目的としています。
経審における完成工事高とは?
経審における完成工事高とは、簡単にいうと、完成した建設工事について、その工事の種類ごとに整理した完成工事の金額です。
ここで重要なのは、
会社全体の売上高=経審で評価される完成工事高
とは限らないことです。
経審では、申請する建設業の許可業種ごとに完成工事高を整理します。
例えば、複数の建設業許可を持つ会社であれば、
- 土木工事
- 建築工事
- 電気工事
- 管工事
など、それぞれの工事について、どの業種に該当するのかを整理する必要があります。
そのため、経審では「会社全体で年間いくら売り上げたか」だけを見るのではなく、
「どの建設工事を、どの許可業種の完成工事高として計上するのか」
という点が重要になります。
完成工事高はX1で評価される
経審では、完成工事高がX1の評価につながります。
2026年7月1日以降の申請に適用される現行制度では、X1は「完成工事高(許可業種別)」を評価する項目です。
P点を算出する際、X1のウェイトは25%です。
つまり、完成工事高は経審の中でも一定の影響を持つ重要な項目です。
ただし、
完成工事高が多ければ、それだけでP点が決まるわけではありません。
P点は、X1・X2・Y・Z・Wの各評価を組み合わせて算出されます。
P点全体について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「経審のP点とは?総合評定値の見方」
また、X1が経審全体の中でどのような位置付けになっているのかを知りたい方は、
「経審のX1・X2・Y・Z・Wとは?評価項目をわかりやすく解説」
をご覧ください。
X1では「年間平均完成工事高」を見る
X1では、単年度の完成工事高だけを見るのではなく、申請する業種についての直前2年または3年の年間平均完成工事高をもとに評点を算出します。
そのため、
「今年の売上が大きく増えたから、次の経審ですぐにX1が大幅に上がる」
とは限りません。
直前2年平均または直前3年平均のどちらを用いるかなど、経審のルールに従って計算する必要があります。
また、どの年度の完成工事高を対象とするのかは、経審を受ける時期との関係もあります。
経審を受ける時期について詳しく知りたい方は、
「経審はいつ受ける?申請時期と決算変更届との関係」
をご覧ください。
なぜ「業種別」に完成工事高を見るの?
経審では、建設業の許可業種ごとに評価が行われるためです。
例えば、土木工事業と建築工事業の両方の許可を持っている会社であっても、
「会社全体の完成工事高が○億円だから、土木も建築も同じように評価される」
という仕組みではありません。
それぞれの業種について、完成工事高を整理して評価することになります。
そのため、複数の業種について経審を受ける会社では、
工事ごとに、どの業種の完成工事高として扱うのか
を適切に整理することが重要です。
「完成工事高」と「売上高」は同じ?
必ずしも同じではありません。
会社の決算書に記載されている売上高には、建設工事以外の売上が含まれている場合があります。
一方、経審では建設工事について、その内容や業種を整理して評価します。
そのため、
決算書の売上高をそのまま経審の完成工事高として考える
ということはできません。
特に、建設工事以外の事業も行っている会社や、複数の建設業許可を取得している会社では注意が必要です。
経審では、決算変更届の財務諸表や工事経歴書などとの整合性も重要になります。
必要書類について詳しく知りたい方は、
「経審の必要書類は?準備しておきたい資料」
をご覧ください。
「完成工事高」と「元請完成工事高」は違う
ここは、経審を理解するうえで重要なポイントです。
完成工事高はX1の評価に関係します。
一方、元請完成工事高はZの評価項目の一つです。現行制度では、Zは「技術職員数」と「元請完成工事高」を許可業種別に評価します。
つまり、
- X1 → 完成工事高
- Z → 技術職員数+元請完成工事高
という違いがあります。
元請完成工事高は、単純に「完成工事高のうち元請分」というだけでなく、経審上の評価方法に従って整理する必要があります。
そのため、
「元請工事が増えればX1が上がる」
という理解ではなく、
完成工事高はX1、元請完成工事高はZにも関係する
と覚えておくと分かりやすいでしょう。
技術職員について詳しく知りたい方は、
「経審の技術職員とは?資格・人数・加点の考え方」
をご覧ください。
複数の建設業許可がある場合はどうする?
複数の建設業許可を持っている会社では、完成工事高を業種ごとに整理する必要があります。
例えば、同じ会社が土木工事と舗装工事の両方を行っている場合でも、工事の内容によって、それぞれどの業種の完成工事高として扱うのかを検討する必要があります。
さらに、一定の場合には、一式工事業と専門工事業との間で完成工事高を「業種間積み上げ(加算)」する制度があります。
国土交通省の経審の手引きでも、一定の要件のもとで、専門工事業の年間平均完成工事高を一式工事業の年間平均完成工事高に含める「業種間積み上げ」が案内されています。
ただし、これはどの工事でも自由に振り替えられる制度ではありません。
振り分け元・振り分け先の許可や工事内容など、所定の要件があります。
そのため、
「売上を自分に都合のよい業種へ移せばX1を上げられる」
というような単純な仕組みではありません。
業種間積み上げを利用する場合には、対象となる工事や許可状況を確認したうえで、経審のルールに沿って整理する必要があります。
完成工事高の「業種間積み上げ」は慎重に
業種間積み上げを利用できる場合、経審上の完成工事高の評価に影響する可能性があります。
一方で、利用できるかどうかは、
- どの建設業許可を持っているか
- どの業種の工事なのか
- どの業種について経審を受けるのか
- 工事内容が要件を満たしているか
などを確認する必要があります。
また、業種間積み上げを利用する場合には、所定の付表を作成する取扱いがあります。
「完成工事高をどの業種に計上するか」は、単なる数字の問題ではなく、実際の工事内容と建設業許可との関係を踏まえて整理することが大切です。
完成工事高が多ければP点は高くなる?
基本的には、X1では完成工事高が評価対象となるため、年間平均完成工事高の多寡がX1の評点に反映されます。
ただし、P点はX1だけでは決まりません。
現行制度では、
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
で算出されます。
そのため、
「完成工事高を増やせば、必ずP点が大きく上がる」
とはいえません。
完成工事高だけでなく、
- 自己資本額等
- 財務内容
- 技術職員数
- 元請完成工事高
- 社会性等
を含めて総合的に評価されるためです。
完成工事高を確認するときのポイント
経審を受ける会社では、まず次の点を確認するとよいでしょう。
① どの業種の工事なのか
工事の内容と建設業許可との関係を確認します。
② 完成工事高の金額は適切か
決算書や工事関係資料などとの整合性を確認します。
③ どの年度の工事高が対象になるか
X1では直前2年または3年の年間平均完成工事高を使用するため、対象年度を確認します。
④ 元請工事と下請工事を区別する
元請完成工事高はZの評価にも関係するため、元請・下請の区分も重要です。
⑤ 業種間積み上げが利用できるか
複数の建設業許可を持つ会社では、一定の場合に業種間積み上げを利用できる可能性があります。
ただし、要件を満たしているかを確認する必要があります。
完成工事高は「数字」だけを見るものではない
完成工事高を確認するときに重要なのは、単純に金額を比較することだけではありません。
例えば、
「この工事は、どの建設業種の完成工事高になるのか?」
という点を正しく整理する必要があります。
また、
「この工事は元請なのか、下請なのか?」
という点も、Zの評価との関係で重要になります。
さらに、決算書、工事経歴書、完成工事高の内訳など、それぞれの資料との整合性も確認する必要があります。
したがって、完成工事高は、
「いくら売り上げたか」
だけではなく、
「どの工事を、どの業種として、どのように整理するか」
まで含めて考えることが大切です。
完成工事高についてよくある質問
Q. 完成工事高は会社の売上高と同じですか?
A. 必ずしも同じではありません。
経審では、建設工事について業種ごとに整理して評価します。
建設工事以外の売上がある場合などは、会社全体の売上高と経審上の完成工事高が一致しないことがあります。
Q. X1は今年の完成工事高だけで決まりますか?
A. いいえ。
X1は、申請する業種についての直前2年または3年の年間平均完成工事高をもとに算出します。
そのため、単年度の売上だけを見て判断することはできません。
Q. 元請工事が多いと完成工事高も多くなりますか?
A. 元請か下請かは、完成工事高そのものの金額とは別の整理です。
元請完成工事高はZの評価項目の一つです。
したがって、完成工事高と元請完成工事高は分けて考える必要があります。
Q. 完成工事高を別の業種に振り替えることはできますか?
A. 一定の場合に「業種間積み上げ(加算)」を利用できる場合があります。
ただし、自由に業種を変更できる制度ではありません。
工事内容や許可状況など、所定の要件を確認する必要があります。
Q. 完成工事高を増やせばP点は必ず上がりますか?
A. そうとは限りません。
完成工事高はX1の評価対象ですが、P点はX1・X2・Y・Z・Wを組み合わせて算出されます。
そのため、P点全体を見ることが重要です。
まとめ
経審における完成工事高は、単純な「会社の売上高」ではありません。
重要なのは、
- 許可業種ごとに完成工事高を整理する
- X1では年間平均完成工事高が評価される
- 元請完成工事高はZの評価にも関係する
- 複数業種を持つ会社では業種間積み上げが利用できる場合がある
- 工事内容や許可との関係を適切に整理する
という点です。
完成工事高はX1に関係する重要な評価項目ですが、経審のP点はX1だけで決まりません。
「自社の完成工事高はどの業種で整理すればよいのか」
「業種間積み上げを利用できるのか」
「現在の完成工事高や元請完成工事高が経審上どのように評価されているのか」
といった点は、会社ごとに確認する必要があります。
経審の完成工事高について確認したい方へ
完成工事高は、決算書の数字だけを見れば判断できるものではありません。
実際の工事内容、建設業許可、元請・下請の区分などを確認しながら整理する必要があります。
「自社の場合、完成工事高をどのように整理すればよいのか分からない」という場合は、現在の経審結果や決算資料などを確認したうえで、事前にご相談ください。
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